不自然な風がつらい。


台風、満月、月食に加え、不気味なごろっとしたかたまりが撫でられたみたいに浮かぶ夕空。ひび割れて、分厚く太く濁って霞んだ空気は決して風になることはなく、ただのうねったかたまりとしてそこに“ただ”在る。


6年前を思い出す。


灰と黒と稠度のゆるいプラスチックが透過しながらゆっくり重くうねって巻いているような重力と磁場の檻。日々少しずつ拡大しながら侵食する。抗うことはあまりに無意味で、ただそこで呼吸する以外に選択肢はない。


その中で私は静かに沈み紛れ沈み見えなくなって。


私は私に届かなくなった。


ひび割れた夕空は嫌いだ。


重く濃くうねる空気のかたまりも嫌いだ。


一万年前も一億年前もきっと、人の手など到底及ぶはずのない自然さで、そこに当たり前のように存在していたに違いないと、そう信じることのできない空は。


この空が生まれることで傷つく誰かがいるかもしれないことを。


道端の一房の雑草にも物語があるのだということを。


まるで呼吸するかのように気づかないでいられる存在があると。


逃れようもなく突きつけてくるこんな割れた空は。


嫌いだ。